Klog ~あきらめの悪い男~

あきらめの悪い30代男が不器用ながらも前向きに生きるためにあがきます。

『破天荒フェニックス オンデーズ再生物語』田中修治

破天荒社長のメガネ屋再生物語

『破天荒フェニックス』を読んでみた。その名の通り、小説仕立ての物語となっているので読みやすい。競合他社や関係者もすべてフィクション(の体)だから、逆にノンフィクションのようにリアルな内容だった。

 

破天荒フェニックス オンデーズ再生物語  (NewsPicks Book)

破天荒フェニックス オンデーズ再生物語 (NewsPicks Book)

 

 

CFOが一番大変

・年間売上20億円に対して短期借入金が14億円、借入金の回転期間はわずか8か月、約定弁済が月8千万~1億円にのぼり、毎月営業赤字2千万を垂れ流している。毎月のように仕入先への支払い繰り延べ、社会保険料と税金の滞納を断行。敷金の戻りで難を逃れるエピソードがあるが、敷金の戻りも把握できていないことから日々の資金繰り管理も杜撰な経理体制だったのだろう。CFO奥野さんは日々の事務処理レベルから資金調達や買収まで文字通り経理財務のすべてを担っていたことがわかる。

・3億円の増資を受ける際、司法書士や会計事務所に断られたため、DESの書類作成から登記手続きまで一人で行い目論見書を完成させてしまう。結局、経理に限らず会社に必要な人材って何とかして危機を乗り越えて、難局を打開できる人間なんだなあと思う。

 

経営者として命をかける

・田中社長は折り返し融資を受けるために連帯保証人となる。中小企業では個人保証って当たり前だと思っていたが、オンデーズの14億の借入金はすべて無担保・無保証であった(・・なぜこれまで無保証で融資を引き出せたのだろう?)。個人保証が無かったのだから、普通は民事再生の道を選択するだろう。

・さらっと書いてあるが、「個人の全財産と貯金を全て切り崩し、急死した父親から母親が相続した資産を全て売却してもらい、そのお金を借り、個人投資家からの短期のつなぎ融資も高金利で個人で借り入れて買収資金を用意した」と言う。ここまで命をかける経営者にならついていきたいと思うだろうなあ。

 

藤田光学という会社

オンデーズは月末に3億円の資金ショート危機を迎える。その時に救いの手を差し伸べたのが藤田光学という会社だ。ホームーページによると年商150億の鯖江本社の眼鏡メーカーだ。非上場なので財務内容はわからないが、3億もの金を社長の独断でポンと出せるのだから、財務が盤石で安定した経営を続ける優良企業なんだろう。さらに、シンジケート・ローンによる銀行取引正常化に失敗した際も藤田光学は資金不足の穴埋めをしてくれる。どんだけキャッシュが豊富にあるんだ・・・。

 

破天荒な実行力

オンデーズの大成功の要因は東南アジアへの積極的な出店だった。シンガポールを皮切りに台湾、フィリピンと次々出店を成功させる。驚きなのが、出店計画があったわけでもなければ、英語を話せる社員も数人で、アジアはショッピングモールが主流なので家賃が年間4~5000万もかかるのに勢いで出店を次々断行したことだ。結果的に2013年時点のアジア圏では、安価な眼鏡屋はブルーオーシャンだったわけだが、この感覚というかセンスというか時流に乗れる力は誰もが持っているものではないだろう。自分の命を捧げた会社でさらに破天荒な挑戦ができる経営者ってやはり選ばれた人間なのかなと思ってしまう。田中社長はホリエモンチャンネルで負債を抱えてても「いい人がいる会社」なら買っていいと思うと言っていた。(ホリエモンはいらねえって言ってたけど)

これは小売業の社長ならではだなあと思った。特に小売りやサービス業って末端スタッフの質が売上に直結するから、人材という資産こそ一番大事だってことを言い表しているんだろうな。